翠色の月の影を追って

ルクセンブルクにあったはずの時計台が
記憶の中だけのものだったとは
どんなに思い巡らせても今は
その場所には月の影が翠色に落ちている
川は南から北へそのせせらぎを段々と強くして
月の中へと流れ込む
翠色の月の影に黒い川が流れ込む
僕は着ていたコートを春の中へ投げ込む
花は咲いている
月はその影を落としている
川は命を運んでくる
時計台が喪われたのは何故だろう
時間は何処を旅しているのだろう
時間が旅に出たせいで
僕は月の影から離れる事が出来なくなった
朝は来るだろうか
あの高らかで朗らかな足音をさせて
もしも時が春を連れ出しているのだとしたら
僕はここで喪われた時計台の面影と共に
去りゆく冬の後ろ姿ばかりを眺めることになるのだ
なんとも心細い
なんとも儚い
それでもこの夜の静寂の向こうから
樹々の騒めきが聞こえて来る
夜の鳥たちが啼いている
蕾が開くその微かな音が風に乗ってくる
花は咲くのだ
世界はやがて春になるだろう
時の旅の終わりを告げるように
月の影に流れていく川の水面をせり上げる様に
世界はやがて春になる
僕は春を観ることが出来るだろうか
この儚い世界で

konishi について

1977年6月26日生 京都出身 蟹座 A型 巳年 夢は文化人になること 目標は演劇集団アクト青山を100年続く劇団にすること!
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