後悔、月、おやすみ。

後悔していることがある。

後悔していることがあるんだ。
今夜の月がとても綺麗で。
それなのに君と月を見なかったから。

あの月はこの地球で、
この地球はあの月なんだ。

と、僕がいったら、
君は、

なにそれ?

とだけ言ったね。
僕らは地球に住んでいると思い込みすぎてる。
もしかしら、あそこに浮いている月は、
小さく切った黄色い紙で、
本当の月はいま僕らが立ってるこの場所かもしれない。

本気で言ってる?

と、君が聞き返すから、

僕は君をからかったりしない。

と言ったら、

大袈裟ね。

と、それだけ言って君は僕の手を握った。
残念な事に僕の手は、機械仕掛けのチタン製で、
人間の温もりをなくしてしまっていたけれど、
君が握ると不思議なほど暖かくなった。

月はね…

僕がそう言いかけると、
君は「いいから」と言ってよりそった。
雲がどこかからやってきて、
月を隠していた。
紙の月は湿った雲の中で星になった。

遠くで街の灯りが落ちて、
全部の電車が止まったのが聞こえた。

聞こえた?
うん、聞こえたよ。
どうしよう?
どうしようね。
決めてよ、
僕が?
うん。
いいよ。

そう言って、歩き出した。
何処に行くの?と、君が聞いて。
僕はゆっくり頷いた。
サンセットタウン。
悪くない。

電車に乗った君を見届けたあとで、
僕は一人夜の街を歩いた。
空には新しい月が出ていた。
本物の月だ。
どうして本物かわかるのかって?
月には川が流れている。
真夜中はそのせせらぎが微かに聞こえるんだ。
それが本物の月の証だ。

でも、
僕はいま一人でこの空を見上げてる。
この月を君と見なかったこと、
後悔しながら。

眠った?
眠ったかな。
月の夢をもしみたら、
それは僕の願いだ。
分かって欲しい。
次はあの月を見よう。二人で。
寒いのは僕だって好きじゃないけど、
月がこんなに、嘘みたいに綺麗なのは、
冬の唯一の良いところだ。

おやすみ。
あした、この月を見たら手紙を書くよ。
君の住む街に、切手を貼らずに。贈る。
おやすみ。
また、明日。また、今日。image

konishi について

1977年6月26日生 京都出身 蟹座 A型 巳年 夢は文化人になること 目標は演劇集団アクト青山を100年続く劇団にすること!
カテゴリー: 日記 パーマリンク